契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
「蓮斗さん……どうしたんですか?」
特に今日はなにも約束はしていない。ここに彼が来るなんて思いもしなかった。
「お義母様のオペの日だろう」
「え……それで来てくれたんですか?」
「当たり前だ。オペは?」
「はい。順調にいけば、そろそろだと思うんですけど……」
だんだん落ち着かなくなって、ちょうどベンチから立ち上がっていたところだった。
私の心情を読み取ったのか、蓮斗さんはそっと背に触れてくる。「大丈夫」と静かに言われ、小さく頷いた。
そんな時、手術室からポータブルオペ着を着た看護師やスタッフが出てくる。慌ただしくなってきた様子に立ち尽くしていると、主治医が自動ドアの奥から現れた。
待っていた私たちの元へやってきて、「問題ありません」と知らせてくれる。
「ありがとうございました」
足早に去っていく後ろ姿にお礼を言うと、腰から力が抜けるような感覚に襲われ背後のベンチに腰を下ろした。
「良かった……」
安堵からつい心の声が漏れる。
私のかけるすぐ横に蓮斗さんも腰を落ちつかせた。
「本当に良かった」
横から聞こえてきた蓮斗さんの声に目を向ける。
私の視線を感じた彼の顔がこちらを向き、柔和な微笑を浮かべた。
多忙なはずなのに、こうして母のことを気にかけ病院まで駆け付けてくれたことが嬉しい。優しい言葉も、心からの本物なのではないかと錯覚しかける。