契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
「これで、澪花の心配事がひとつ減ったな」
母の体の心配はずっと続いてきたこと。
治療を受けることができず先行きは不透明で、明るい未来は見えなかった。
でも、こうして手術を受けられる環境や医師の手配、そして治療費の支援があって今日の日を迎えられた。
それもこれも、蓮斗さんに出会わなければ叶わなかったこと。
彼が、私と契約したいと提案してこなければ、母は今も以前の病院で入院したまま、ただただ現状維持の毎日を送っていたのだろう。
「はい。本当に、母の件はお世話になりました」
蓮斗さんは約束を果たしてくれた。
だから、私も……。
「私も、約束は果たしますので」
彼と結婚して、妻となる。それが蓮斗さんの求める対価。
母を助けてもらったからには、私もその役目を全うする。
「そうか」
蓮斗さんはふっと笑ってベンチシートを立ち上がる。
「お義母様が落ち着いたら、連れていきたいところがある」
「連れていきたいところ、ですか?」
「ああ。少し主治医と話をしてくる」
蓮斗さんはそう言って手術センターを出ていった。