契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
手に触れることには、未だに慣れない。
蓮斗さんはなんのためらいもなく私の手を取り繋ぐけれど、私は初めと同じようにされるがままの状態。自分から指に力を入れて握り返すなんてできない。
指先が触れ合うと、急にこの間の出来事が頭の中を埋め尽くす。
オーベルジュでの食事後、送り届けてもらった車の前でキスをされたことだ。
あの後から、事あるごとにあの瞬間のことを思い出してひとり動揺を繰り返している。
その症状もだんだん落ち着いてきていたのに、今触れ合ったらまた急激に蘇ってきてしまった。
こんなタイミングで意識したくなかったのに困ったものだ。
地下駐車場から専用エレベーターで一階エントランスへ。
扉を出て、そこに広がったエントランスにまたびっくり。広いホールは外からではわからない解放感のある空間で、全面のガラス張りからは中庭と思われるグリーンが見える。
ソファの用意された待合いと、なんとコンシェルジュも在中している。
「セキュリティーは万全の物件だ」
「はい……」
一体何重のセキュリティシステムなのだろう。コンシェルジュも在中のようだし、四重、五重はあるに違いない。
驚愕しながら今度は居住階へのエレベーターに乗り込む。蓮斗さんが指定したのは五階、最上階だ。
五階のエレベーターホールを出ると、中庭を囲うように左右に共有廊下が伸びる。
蓮斗さんは右手に進んでいき、突き当りのドアの前で足を止めた。