契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
「正面奥がバスルーム、この手前が……」
蓮斗さんがドアを開く。部屋の中は、奥側に天井までの大きなガラス窓。バルコニーへ続く解放感のある部屋だ。
「夫婦の寝室になる部屋だ」
夫婦の寝室と言われて心臓がどきっと反応する。
今更だけれど、夫婦になるということはそういうことだ。
でも、私たちは契約結婚という関係。
表向きには夫婦として振る舞うわけだけれど、プライベートな空間では人目を気にする必要はないはず。
そう考えてみてすぐ、自分の脇の甘さに気づく。
この住まいがプライベート空間といえども、例えば蓮斗さんのご両親や私の家族、近しい人が訪れて寝室が別だと知れば、新婚なのに大丈夫なのだろうかと思うに違いない。
そういう部分まで考えれば、形だけでも寝室が一緒というのは契約結婚の契約のひとつのようなものだ。
寝室が一緒、ベッドがひとつだからといって意識するのはおこがましいこと。すべて、夫婦と見られるための体裁だ。
ひと通りの部屋を案内してくれた蓮斗さんは、自由に物件内を見て回ってほしいと言った。
ドアを開けてまで見ていなかった、クローゼット収納部分をひとつずつ見ていったり、最新式のお手洗い、洗面台はホテルライクなダブルシンクで驚いた。バスルームは自宅の浴槽とは思えないほど広々としていて、ひとりで入るには勿体ないくらいの広さだった。