契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
「昨日、澪花から聞きました。一緒に住む新居に連れて行ってもらったって」
澪花が昨日のことをお姉さんに話していたとは思わなかった。
「嬉しそうに話してました。すごいところで、本当に私なんかが住んでもいい場所なのかな、なんて、そんな話も」
嬉しそうに話していたなどと聞いて、自然と気持ちが上がる。澪花が人に自分とのことをどんな風に話しているか聞けるのは貴重だし、知りたい。こんな風に思ったことは澪花が初めてだ。
「そうでしたか。近いうちに部屋が整ったら一緒に住み始めようと思っています」
お姉さんはにこりと微笑み、また「ありがとうございます」と頭を下げた。
「気難しいところもある子ですが、姉の私なんかよりもしっかり者で心の優しい子なので、妹をよろしくお願いします」
改まって挨拶をされると、自分の取り付けた契約結婚という事実に申し訳なさが込み上げる。
君に関心を持ったと、真っ向からアプローチしたつもりだった。
しかし、澪花は一定の距離を保ち、それ以上近づかせてくれない上に、あっという間に逃げていなくなってしまう不安すら俺に与えた。
逃げられると追いかけたくなるというのは本当の話で、なんとか関係を繋ぎ止めたいと、そんな衝動に駆られた。
そう思っていた時、お義母様の状況を知る機会に恵まれた。
お義母様の治療と引き換えに契約結婚を申し出た俺は、必死すぎて最低の男かもしれない。エゴの塊でしかないとも軽蔑する。
でも、自分の価値を落としてでも彼女との関係を始めたかった。