契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】


「すみません、お待たせしました」

「今来たばかりだ。待ってない」


 蓮斗さんは助手席側に回ってドアを開ける。近づいた私の背に触れ、乗車を促した。

 車内はとても暖かい。

 まだまだ乗り慣れない革張りのシートに腰を落ち着けたところで、蓮斗さんが運転席に戻った。

 今日はチャコールグレーのスーツに、ブラウンカラーのネクタイを締めていて落ち着いた雰囲気。観察するように見てしまい、慌ててシートベルトに手を伸ばした。


「どこか行きたいところは?」

「えっ、特には……」

「じゃあ、食事にでも行こう」


 今日は新居の件で約束したとばかり思っていたから、どこか行きたいところがないか訊かれて意外だった。

 食事をしながら話す形を考えているのかもしれない。

 蓮斗さんが向かったのは、自社の『HOTEL TACHIBANA』。

 ここに来るのは、クリスマスイブと、その後ドレス代を支払いに訪れた時以来だ。

 こうして食事をしに訪れるのは初めてで、改めてラグジュアリーホテルの敷居の高さに緊張を高める。

< 99 / 199 >

この作品をシェア

pagetop