契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
「すみません、お待たせしました」
「今来たばかりだ。待ってない」
蓮斗さんは助手席側に回ってドアを開ける。近づいた私の背に触れ、乗車を促した。
車内はとても暖かい。
まだまだ乗り慣れない革張りのシートに腰を落ち着けたところで、蓮斗さんが運転席に戻った。
今日はチャコールグレーのスーツに、ブラウンカラーのネクタイを締めていて落ち着いた雰囲気。観察するように見てしまい、慌ててシートベルトに手を伸ばした。
「どこか行きたいところは?」
「えっ、特には……」
「じゃあ、食事にでも行こう」
今日は新居の件で約束したとばかり思っていたから、どこか行きたいところがないか訊かれて意外だった。
食事をしながら話す形を考えているのかもしれない。
蓮斗さんが向かったのは、自社の『HOTEL TACHIBANA』。
ここに来るのは、クリスマスイブと、その後ドレス代を支払いに訪れた時以来だ。
こうして食事をしに訪れるのは初めてで、改めてラグジュアリーホテルの敷居の高さに緊張を高める。