蝶と柊 ~冷たくて甘い君~
うまく状況が飲み込めず、あたふたしている私を見て、ふう、と一息ついて柊さんは言った。
「駅前で、あんたとあんたの連れがガラ悪そうなのに絡まれて路地裏に消えてったの見たから、気になって後を追ったら、そいつらがあんたらのこと薬使って眠らせて拉致ろうとしてたからシメた。んであんたの家に連れて帰ってきた」
えっ…?
恐怖で固まる私を横目に、そんだけ、と言ってソファの方へ歩いて行きもう1度寝そべる彼。
...何故家の場所がわかったんだろうか。と脳を一瞬嫌な思考が過ぎる。
明らかに見た目ヤンキーなこの人に家がバレてしまったのはちょっとまずいのではなかろうか。
だが、あの時は学校帰りであったことを思い出した。
そうか、きっと学生証に書かれていた住所を頼りにここまで連れて帰ってきてくれたのだろう。
ぼんやりとしか思い出せていなかったし、きっとパニックになって記憶が混同してしまっていたんだ。
「ということは、あなたは私を助けてくれたってこと、ですか」
「要約すればそうなる。かなり熱もあったみてえで苦しそうだったから。お節介だったか?」
そういえば、起きた時に額がちょっと冷たく感じたのはそういうことか。
お節介だなんて、そんな。
この人が私たちのことを見かけていなかったら、今頃私と凪沙は……なんて考えると、震えが止まらない。
「いや、感謝してます。助けてくれてありがとう」