ケーキだけかと思ったら…私まで中条くんに溺愛されました
 私はキッチンへ。

 うちのリビングとキッチンは別々だから、作っている最中は中条くんの姿が見えない。大丈夫かな?って思いながら、作業を進めていく。

 作業している私を、水を飲みながらじっと見てくるお兄ちゃん。
「なんでそんなに見てくるの?」
「すごい数作ってるなって思って……」

「クッキーをたくさん作っておけば、休み中に私たちが会えなくても、中条くんが私の作ったクッキーをたくさん食べられるなって思って。中条くんね、私のお菓子だけ美味しいって言ってくれたんだ」

「ふーん、そうなんだ……」

 急に低い声になるお兄ちゃん。
 ちらっと見ると表情も不満そう。

 何か面白くないのかな?
 お兄ちゃんがここにいると、お菓子作るの集中出来ないかも。

「見られてるの気になるから、あっちに行ってもらっていい?」

 動こうとしないお兄ちゃん。

「なぁ、『小桃のお菓子だけ美味しい』って言ってたらしいけど、俺がここでクッキーを今作って、それを渡しても『美味しい』って言われるんじゃない?」

 なんか、今日のお兄ちゃんいじわる。お兄ちゃんは見た目不良な感じだけど、私に対しては普段すごく優しい。なのに――。

 お兄ちゃんは、私の横でクッキーの材料を新たに準備して作り出した。

 ちょっと泣きそうになってきた。でも今泣きそうなのは、お兄ちゃんがいじわるなことを言ってきたからではなくて。

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