ケーキだけかと思ったら…私まで中条くんに溺愛されました
 中学三年生になって、一ヶ月ぐらいたった時の昼休み。

 気がつけば、秘密の場所の前に立っていた。中は見えないし、音も聞こえなくて静か。だけど、なんとなくドアの向こうに中条くんがいる気配がした。

 中に入りたい気持ちもあったけれど……。

 やっぱり、やめとこう。

 秘密の場所に背を向けて、教室に戻ろうとした。

 その時、突然、誰かに手を強く引っ張られた。私は吸い込まれるようにして、秘密の場所に入っていく。

 いきおいが強かったせいか、ふたりはしりもちをついた。

 手を引っ張ってきたのは……青い顔をしている中条くんだった。

「桜さん、桜さんのお菓子不足してて、辛い」と、中条くんの目はうとうとしていた。

「中条くん、大丈夫? いつものお菓子はないの?」
「あるけど、効き目が……」
「効き目がどうしたの?」

 中条くんに対して感じていたもやもやな気持ちはどこかにふきとんで、今はすごく心配。

「っていうか、桜さん不足……」

 そう言いながら、中条くんは私のことを強く抱きしめてきた。

――わ、私不足?

 絶対に今の言葉は、中条くんの言い間違いだよね?
 これ以上は絶対に、勘違いなんてしない。変な期待はしない。

 だけど、その言葉と抱きしめられていることにドキドキしすぎて、私の全身が熱くなって、心臓の音が早くなってすごい。




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