ケーキだけかと思ったら…私まで中条くんに溺愛されました
 しばらくすると中条くんは「ごめんね」ってあやまりながら、私からはなれた。

「本当にごめん、無意識に桜さんを抱きしめてた……」

 上目遣いで、様子をうかがいながら私を見る中条くん。

「いいよ、私は大丈夫だから」

 ドキドキがすごくて、本当は大丈夫じゃないけれど――。

「中条くん、体調はもう大丈夫? 眠気はおさまった?」

 ぐいっと中条くんの近くに寄って、中条くんの顔色を確認した。私が近づいた時のいきおいにおどろいたのか、中条くんはびくっとした。

 中条くんの顔色は、いつもの色に戻ってきた。むしろ赤い? とりあえず、体調は良くなってきた感じかな?

「うん、落ち着いた。助かったよ、ありがとう」

 ふたり同時に、目を合わせてほっと息をつく。

「よかった! あのね、クッキー、あと二枚しかないけれど、あげる」

 いつも中条くんに渡していたのは、星とか猫とか、色々な型を使って作ったキレイな形のクッキーだった。けれど、今日持っていたのは丸めて適当につぶした、いびつな形。

 だって、中条くんに渡さないだろうなって思っていたから。今日渡すことになるのなら、キレイな形にすればよかったな……。

 クッキーを中条くんに渡すと、中条くんは「こういうのも、可愛い形だね」って、微笑んでくれた。

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