ケーキだけかと思ったら…私まで中条くんに溺愛されました
 うずくまっている中条くんの肩を、軽く数回たたく。

「中条くん、大丈夫? 具合悪いの?」

 青白い顔をして、下を向いている中条くん。

 どうしよう、誰か大人の人呼んだ方がいい? それとも、救急車?

 考えながら中条くんを見つめていると、中条くんは突然、顔をぱっと上げた。

そしてケーキの方を見て、くんくん匂いをかぎだした。

「あの……桜さん、それって、もしかして甘いお菓子だったりする? もしかして、ケーキとか?」

 か細くて小さな声で私に質問してくる中条くん。

「えっ、あ、うん……。私がさっき作った、イチゴケーキだけど」

 この箱は中身が全く見えないし、私はケーキの香りを感じない。中条くん、中にケーキが入ってるって、よく分かったなぁ。

「ケーキ……ちょうだい?」

 中条くんの弱々しかった目は、少しだけ強みを増した。

「あっ、でも……」
「お願い!」

 中条くんは、イケメンすぎる、不思議な雰囲気をまとう男の子。銀髪で、肌が色白で、まるで雪みたいに溶けてしまいそうな見た目をしている。

 私が通っているゆきしろ学園の中で一番のイケメンだと思う。そして一匹狼タイプな中条くんは、周りからは、高嶺(たかね)の花のような存在で、あこがれられている。

 そんな中条くんが今、私を見つめてお願いごとを……。

 中条くんに、そんなふうにお願いされたら、ぜったいに断れないよ――。

 私が食べようとしていた分をあげようかな?

< 3 / 38 >

この作品をシェア

pagetop