ケーキだけかと思ったら…私まで中条くんに溺愛されました
「ひとつあげる! あのお店でね」
「いいの? ありがとう」

 叔母さんのお店を指さして、すぐ近くにお店があることを伝えた。

 私がケーキをあげることを伝えると、希望の光を手に入れたみたいに中条くんの目が一瞬、かがやいた。

 叔母さんのお店は、小さなビルの1階にある。

 ふらふらしている中条くんに寄り添いながら、お店の方へ向かっていく。

 ドアを開くと、具合悪そうな中条くんを見た叔母さんは、すぐにかけよってきた。そして「大丈夫?」と中条くんに声をかける。

「はい、大丈夫です。ケーキを食べれば……」

 中条くん、そんなにケーキが大好きなのかな?

 叔母さんは部屋の真ん中にある赤いソファに、コートを着たままの中条くんを座らせた。それからフォークとお皿を、中条くんの目の前にある木目調のテーブルの上に置いて準備した。

 私はベージュのコートを脱いでから、中条くんのとなりに座った。

 食べたらどんな感想くれるかな?
 中条くんの体調、本当によくなるのかな?

 なんて考えながらケーキの箱を開けて、中に入っているケーキをお皿の上に乗せた。

 ひと口食べた中条くんは「お、美味しい」と、目をぱちっと開き、おどろいたようすの表情をした。

 普段学園では無表情なのに……。
 その表情の中条くんはすごくめずらしくて、ちょっと私もおどろいた。

――中条くん、こんな表情もするんだ。
 
「ケーキってこんなに美味しかったんだ」

 中条くんは、まるで初めて食べたような感じで、きらきらしながらそう言った。

 あれ? ケーキ好きそうなのに、食べたことがないのかな?

 私と中条くんの前に花柄のティーカップを置く叔母さん。そしてふたりのカップに、温かいミルクティーを注いでくれた。

 注ぎ終わると叔母さんは私の向かい側に座る。

叔母さんが私の顔をじっと見てきた。なんだろう……見られすぎて、気持ちがムズムズしてくる。
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