ケーキだけかと思ったら…私まで中条くんに溺愛されました
「私、ここに初めて入ったかも」と辺りを見回した。

 大きなホワイトボードや、ダンボールとか……とりあえず使わなくなったようなものが積まれたりしている。

ここはあんまり人の出入りはなさそうだけど、ほこりとかなくて、予想よりも綺麗な場所だった。

 そして太陽の光がちょうど差し込んできていて、気持ちがよい。

「誰もこないから、ここでよく甘いお菓子を食べて、休んだりしているんだ。僕がいつもここにいることは、誰にも言わないでね?」
「そうだったんだ……分かった、誰にも言わない!」

 中条くんと、ふたりだけの秘密の場所――。
 心の中で、ふわっとしたものがこみあげてくる。


 教室のかどの方へ行って、一緒に並んで座った。クッキーをゆっくり食べている中条くん。

 近くであらためて見ると、中条くんは顔立ちがはっきりしていて、本当に整っている。くっきりとした二重の目、そしてまつ毛もくるんとしていてすごく長い。肌もきれいでツヤツヤ。

 クッキーを食べている姿を眺めていると、中条くんが甘いお菓子の国の王子様みたいに思えてきた。

 ずっと眺めていると、あることに気がつく。

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