この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
 相変わらず、メルさんのフォローはフォローになっていない。
 わっ、と両手で顔を覆った私の頭を、隣に座った相手──トラちゃんが撫でた。
 彼は戦々恐々とした様子で呟く。

「やっぱり、この公爵令嬢こわいよ……」

 彼の見張り兼護衛を務めるはずだったミットー公爵と准将は、現在ミケの代わりに領主の娘への対応をしている。
 先ほどの野太い悲鳴はこの二人のものだが……しかし、屈強な軍人親子が悲鳴を上げるなんて、いったい何があったのだろうか。

「私が領主の娘を取り押さえるのは、訳ないんだがな」
「殿下は何もなさらないでくださいませ。事を大きくして旅の予定が狂うのはごめんですわ」

 肩を竦めるミケに、ロメリアさんがぴしゃりと言う。
 そんなわけで、今夜はこの広い客室で、私とロメリアさんとメルさんに加え、ミケとトラちゃんも眠ることになり、代わりにミットー公爵と准将が囮としてミケの部屋に泊まることになった。
 もともと置かれていたゆったりサイズのベッドを三つくっつけて、思い思いに寛ぐ。
 私以外は生粋の王侯貴族だが……

『まあ、戦場を経験したやつらなら、男女入り乱れて雑魚寝するくらい、平気じゃろうなぁ』

 そう呟いたネコが、私の膝から立ち上がって伸びをすると、ベッドの上を悠々と歩き始めた。
 子ネコ達はスプリングを確認するみたいにぴょんぴょん飛び跳ねている。
 なお、子ネコは五匹から四匹になっていた。
 王妃様にベッタリだった一匹が、そのまま王都に残ったためだ。
 ネコはそれが不服なようだが、その首の後ろには新たな毛玉もでき始めていた。
 そんな中、私の顔を下から覗き込むように寝転んだミケが、笑い混じりに言う。
 
「しかし、タマ。絨毯に包まれて部屋を脱出するのは妙案だったな?」
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