この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
「なんだ、お前……タマについていなくていいのか?」

 ネコには人間の美醜はわからないが、珠子曰く超絶イケメン王子様なミケランゼロ・ベルンハルトである。
 なお、ネコは親バカなので、自分の娘と認識している珠子のことは、人間っぽい形をした者の中では最も可愛く美しく尊いと思っているし、異論も認めない。
 天邪鬼でもあるので、本人には決して言わないだろうが。

「ネコが私のところに来るのは珍しいな。軍の施設ではいつも、将官達にべったりのくせに」
『それはな、お前が我に興味がないからじゃ。そもそも、お前だって珠子にべったりじゃろうが』

 ミケランゼロが開いた窓から、ネコがするりと部屋の中に入る。
 さすがに王子に充てがわれた部屋だけあって、珠子が泊まる一般士官用の部屋がいくつも入るほどの広さがあった。
 そんな中、ネコはまっすぐにベッドに向かう。
 そして、窓辺に留まっているミケランゼロを見て、にゃあ、と……

『おいこら、王子。ボケッとしとらんで、さっさとこちらへ来て座らんか。ベッドじゃないぞ、下に座れ。床に両手を突いての謝罪を要求する』

 ぬあー、にゃあ、にゃにゃ、うー、ううー、にゃうー、とどすの利いた声で鳴いた。
 その目は据わり、耳は横にピンと張ったイカ耳状態。
 しっぽをバンバンと、何度もベッドに叩きつけている。
 怒ったり苛立ったりしている時の猫、そのものだった。
< 119 / 282 >

この作品をシェア

pagetop