この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
「恥ずか、死ぬ!」

 思わずそう叫んだ私は、両手で顔を覆ったままベッドの上で転がり回る。
 死ぬなんて言葉を容易に使うな、というミケの叱責が聞こえた気がした。
 しかし、素っ裸で彼の膝の上に異世界トリップしてきた事実より、昨夜の自分の行いの方がよほど恥ずかしい。

「ミケに謝って……それから、トラちゃんとロメリアさんと、メルさんにも。准将は……別にいいかな。チートにデレデレしてたし」

 まだ起き出すには早い時間だが、今から眠ると寝坊してしまいそうなため、私はひとまず身支度を整えることに決めた。
 着替えを済ませ、共同の洗面所に向かうため洗面用具だけ持って部屋を出る。
 子ネコはまだ眠っていたが、一匹で部屋に置いていくのは忍びなくて、そっとワンピースのポケットに入れた。
 二百人以上が滞在しているとは思えないほど、要塞の中はとても静かだった。
 昨夜の山越で疲れて、みんなまだぐっすり眠っているのだろう。
 私が廊下に配置されていた夜勤の守衛に挨拶をしていると、二つ隣の部屋の扉がそっと開いて、見知った顔が現れる。

「おはようございます。お早いですね」
「おはようございます──メルさん」

 ちなみに、私の一つ隣の部屋はロメリアさんが使っているが、朝が弱いためまだまだ起き出す気配はない。

「メルさん、あの……昨夜はごめんなさい。皆さんの話もろくに聞かずに引き篭もっちゃって……」
「どうかお気になさらず。心の整理をつけるのには、誰しも時間が必要なものです」

 一緒に洗面所で顔を洗った後のこと。
 私の謝罪を静かに微笑んで受け入れてくれたメルさんが、朝日を見ながらお茶でも飲まないかと誘ってくれた。
 
「朝食まではまだ随分と時間がございますし、ロメリア様のお目覚めまで私も暇なのです。付き合っていただけませんか?」
「あっ、はい……では遠慮なく、ご一緒させていただきます」

 気を使わせてしまったかもしれないとは思ったが、誘ってもらえたのが素直に嬉しい。
 とはいえ……
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