この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
「……やかましいですわよ」
『みぎゃーっ!? や、山姥ぁああーっ!?』
「「「ミィイイイイッ!?」」」

 寝起きで、凄まじく乱れ切った髪のロメリアが現れた。
 あまりの有様に、ネコ達は一斉に毛を逆立ててやんのかステップを踏む。
 この山姥のごときロメリアを、フランス人形みたいと珠子が評するような美しい姿に整えるのもメルの役目だった。
 そのため、ボサボサ頭のロメリアを目にしたミケランゼロは、たちまち険しい顔つきになる。
 
「メルがロメリアを放置したまま食事に行くなど、ありえない……何か、不測の事態が起こったのか」

 この後、要塞のどこにも珠子がいないこと、メルの荷物と愛馬の姿も無くなっていること──そして、近くの丘に朝日を見に行くと言って、彼女達が馬に相乗りして出掛けて行ったことが判明する。
 それを聞いたミケランゼロは、慌てて馬に跨り、二人が向かったとされる丘を目指した。
 同行者は、ミットー公爵、准将、ロメリアらミットー公爵一家と……

「どうして……! ねえ! なんで、タマコがっ……!?」 
「黙っていろ、トライアン! 舌を噛むぞ!」

 一緒に行くと言って聞かなかったトライアンの四名だ。
 トライアンは、ラーガスト王国に引き渡すと決まった時点で捕虜ではなくなったが、警備上の都合で准将との相乗りになっている。

『ぬぉおおおお! たぁあまこぉおおお!!』
『かーちゃん、落ち着くにゃ! しっかり掴まってないと、落ちちゃうにゃん!』
「「「ミイイイイッ!!」」」

 ネコはミケランゼロに、チートはミットー公爵に、子ネコ達はロメリアにくっ付いてきた。
 やがてたどり着いた丘の上に、珠子とメルの姿はなかったが──そこに突っ立つ木の下にある物を見つけて、一行は体を強張らせた。
 木陰にあったそれが、遠目には一瞬、血溜まりに見えたからだ。
 ただし近づいてみると、まったくの別物であると判明した。
 ロメリアがそれを一束拾い上げ、確信を持って告げる。
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