この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
 私は、何が何だかわからなかった。
 ものすごいスピードで後ろに流れていく景色を呆然と見送ることしかできない。
 ただ、先日の御前試合での戦いっぷりを見ていたため、自分ではどうあってもメルさんには敵わないこと、走っている馬から飛び下りるのは自殺行為であることくらいは理解していた。
 そのため、馬の足が止まるまで、じっと耐えたのだ。

「あの、メルさん。一応お尋ねしたいんですけど……ミケ達のところに戻ったりって……」
「申し訳ありません。それは、できません」

 私の問いに、メルさんは言葉どおり申し訳なさそうに、しかしきっぱりと答えた。
 今自分がどこにいるのかもわからない私は、途方に暮れる。

(朝一番に顔を見せるって、ミケと約束したのに……)

 彼はもう、私の不在に気づいただろうか。
 探してくれているだろうか。
 ネコ達は、いったいどうしているだろう。
 一気に不安が押し寄せてきて、体がブルブルと震え出す。
 それに気づいたらしいメルさんが、私の肩に触れようとした時だった。

「あっ……」

 ワンピースのポケットがもぞもぞしたかと思ったら、真っ白くてモフモフしたものがぴょこんと飛び出してきた。
 昨夜、唯一私の側に残っていた子ネコである。

「ミー?」

 今やっと起きたらしいその子は、私とメルさんの顔を見比べて、可愛らしく首を傾げた。

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