この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
 トライアンは、ミケランゼロの胸ぐらを掴んでいた手を離した。
 顔を俯かせて、ぼそぼそと言う。

「……絶対、タマコにまた会わせてくれる?」
「ああ、必ず」
「僕は、あなたを信じるしかない……信じていいの?」
「お前の信頼を裏切らないために、最善を尽くす」

 そう答えたミケランゼロだが、いや、とすぐに首を横に振った。
 
「お前の信頼を裏切らないためでも、勅命や父上の願いを叶えるためでもないな……私自身が、タマを取り戻さずにはいられないんだ」

 彼の本心を耳にしたミットー公爵と准将が、無言のまま頷き合う。
 忠実な家臣達は、王子の決断に全面的に従うことに決めた。

「要塞に戻り支度を整え次第出立する。私とロメリアと准将は部隊から離れてメルの馬の足跡を追う。ミットー公爵はトライアンを守護しつつ部隊を率い、予定通りの道筋を進んでくれ。二日後に国境で落ち合おう」
「承知しました」

 准将がトライアンを馬に乗せ、チートを肩に乗せたミットー公爵と子ネコ達を抱えたロメリアもそれぞれ騎乗する。
 最後にミケランゼロが、足下で右往左往していたネコを抱え上げた。

「お前は……タマを大切に思っているんだな」
『あったりまえじゃあ! あれは、我の一の娘じゃぞっ!!』
「私も──タマが大切だ」
『お、おう……』

 ミケランゼロも、ネコを抱えたまま愛馬に跨る。
 そうして、その背中を──珠子の髪を思わせる真っ白い毛並みを撫でながら、ネコにだけ聞こえる声で言った。

「必ずタマを見つけ出し、取り戻す。約束する。だから──彼女に辿り着くまで、私の心を支えてくれないか?」
『……しょうがないやつじゃ』

 ネコはふんと鼻を鳴らしつつも、ミケランゼロの腕の中で大人しくなった。
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