この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
「結局、父は何をしようとも私を受け入れてはくれませんでした。けれど、どん底にいた私をロメリア様が見つけてくださり、側に置いてくださいました。あの方は、父に全否定された私という存在を、肯定してくださったのです」

 ロメリアさんに取り立てられ、ミットー公爵家で寝起きをするようになったことで、メルさんは父親とはある程度距離を取れるようになっていた。
 ヒバート男爵も、娘がミットー公爵家に重用されることに満足していたらしいが……

「そんな父は今、私を良家に嫁がせようと躍起になっています。ロメリア様が王家に嫁げば、ヒバート家の価値も上がって良縁が舞い込むと信じているのです。なぜ男に生まれなかったのか、と私を詰ったくせに」

 滑稽でしょう、とメルさんが涙声で呟いた。

「みい! にゃう! にゃうう!」

 慰めようとするみたいに、子ネコがしきりにメルさんの頬を舐め始める。
 膝の上に置かれた彼女の拳が震えているのが目に入り、私はとっさに手を伸ばしてそれに触れた。
 ぱっと顔を上げたメルさんが、縋るように見つめてくる。

「タマコ嬢……申し訳ありません! 本当に、申し訳ありませんでした! 嫌われても恨まれても当然のことをしてしまったと、自覚しております!」

 そう言う彼女の両目は、涙でいっぱいになっていた。
 強引にミケから引き離されて不安だし、相変わらずお尻は痛いが……
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