この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
 ミケが来るまでベッドでゴロゴロしていたネコは、俄然やる気になった。
 私の肩に飛び乗ってきて、にゃんにゃん、にゃごにゃご、耳元で騒がしい。
 子ネコ達の方は、ベッドの上で団子状になって寝息を立てていた。

「タマ、早くしろ」

 はあ、と一つ重々しいため息を吐いたミケが、バンバンと自分の太腿を叩いて催促してくる。
 そんな、いかにも切羽詰まった様子を見せられれば、観念するしかないだろう。
 私はウキウキしているネコを肩から下ろすと、おそるおそるミケの側に寄る。
 すると、すぐさま膝の上に横向きに座らされ、長い両腕で包むようにして抱き締められた。

「……」

 私の頭頂部に顔を埋め、ミケはそのまま口を閉ざしてしまった。
 黒い綿毛が続々と彼の体から湧き出してきて、ふわふわと宙を舞い始める。

『ぐはははははーっ! いいぞいいぞぉ! 食い放題じゃああっ!!』

 ネコは私達が座るソファの周りを駆け回り、それらを片っ端から食らっていった。
 はあ、とまたミケがため息を吐く。
 黒い綿毛がこぼれ落ちた分、さっきよりは幾分軽くなったように思えたが……

「疲れた……」

 ぽつり、と私のつむじに呟きが落ちる。
 ミケの心がひどく脆くなっているように感じ、私はたちまち不安になった。
 それまでは借りてきた猫みたいにじっとしていたものの、居ても立っても居られず彼の体に腕を回す。
 そうして、両手で背中をさすっていると、ミケの方も私の頭にスリスリと額を擦り付け始めた。
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