この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
 何があったのか、とは聞けなかった。
 尋ねたところで、私ではきっとベルンハルト王国軍元帥閣下の抱える問題は解決できないだろうし、そもそも軍の人間でもない私には話せないことかもしれない。
 それでも……

(私のところにきてくれて、よかった……)

 元の世界では私も、辛いことや悲しいことがあった時、こうして猫カフェの猫達のモフモフに癒されたものだ。
 マンチカンの方のミケみたいに普段はつれない子達でも、私が本当に凹んでいる時は大人しく抱っこされてくれた。

(まさか、そんな猫の立場に自分がなる日がくるなんて、考えたこともなかったけど……)

 ミケの胸に耳を押し当てる形になっているため、トクントクン、と心臓の音がよく聞こえる。
 温かくてがっしりとした体にくっ付いていると、えも言われぬ安心感を覚えた。
 何より、絶対的な味方の腕の中に包み込まれているという事実が、私をこの上なくリラックスさせる。
 母の胎内というのは、こういう感じなのかもしれない。
 私は何も覚えていないし……何も、知らないが。
 さらに、大きな手のひらにゆったりと頭を撫でられていると、瞼が自然と落ちていった。
 ミケを癒やしているつもりが、いつのまにか私の方が癒やされていたのだ。

(気持ちいい……ねむい……)

 私に抱っこされていた時の、マンチカンの方のミケや他の猫達も、こんな風に心地よく感じてくれていたなら、いいのだが。
 そんなことを考えつつ、私は一つ、大きな欠伸をした。



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