この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
 負の感情を迸らせるミケとは対照的に、その男の顔にはなんの感情も浮かんでいない。
 そんな彼と──私は一瞬、目が合ったような気がした。
 次の瞬間、私の視界はついに幼いミケの負の感情で塗り潰されてしまう。
 押し寄せる黒い綿毛の大群から眼球を守ろうと、きつく両目を瞑った。

 それから、どれくらい経っただろうか。

 次に瞼を開いた時、私は簡素なベッドに寝かされていた。

「……ここ、は?」

 見覚えのない天井をしばしぼんやりと眺め、それから周囲を見回そうとして、それを見つける。

「……ミケ?」

 左脇腹のあたりに、金色の毛に覆われたものがあったのだ。
 半年余り前の、異世界転移してきて初めてこの世界で目を覚ました時のことを思い出す。
 しかし、私はもう、側に寄り添ってくれている相手をマンチカンのミケと間違えることはなかった。

「ミケ……ミケ! ミケだ……っ!」

 寝転がったまま左手を伸ばし、金色の毛をわしゃわしゃと撫でる。
 とたん、弾かれたみたいに顔を上げたのは、私を追いかけて崖から落ちた人。

「タマ、目が覚めたのか……よかった……」

 人間のミケは、綺麗な顔を泣き出しそうにくしゃりと歪める。
 そして、覆い被さるようにして私を抱き締めた。
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