この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
「つまり……ネコは、違う世界には行かなかったんですね」
私は、薪を抱えて戻っていく老婦人を見送りつつ呟く。
それに、再び薪割り斧を振り上げたミケが否と答えた。
「行かなかったのではなく……行けなかった、みたいだな」
「えっ? 行けなかった? 行けなかったんですか!?」
「ああ。だから──あの通り、気を落としている」
「それで、あんな猫背になってるんだ……ネコだけに」
薪置き場の隅に座り込んだネコは、見るからに悄然としていた。
その首の後ろにできた毛玉は順調に育っているが、何やら本体の方が弱っている。
撫でてくれた老婦人に愛嬌を振りまく気力もなかったほどだから、相当だろう。
それにしても、異世界に行けなかったとはどういうことだろうか。
疑問に思っていると、ネコはいまだかつてないほど弱々しい声で私を呼んだ。
『珠子や……母はもう、だめじゃ……』
「いや、何が……ちょっと大丈夫? しっぽヘニャヘニャになってるじゃない。元気出してよ」
『我はもう、世界から世界へと移る力を失ってしまった……これでは、ただのかわゆいネコちゃんではないか……』
「ただのかわゆいネコちゃんって……凹んでるのかと思ったら、普通に自己肯定感高いなぁ」
崖から落ち、地面に激突するのを、ネコは異世界に転移することで回避しようとした。
しかし結果的には、この世界の中でしか転移することが叶わなかったらしい。
私は、薪を抱えて戻っていく老婦人を見送りつつ呟く。
それに、再び薪割り斧を振り上げたミケが否と答えた。
「行かなかったのではなく……行けなかった、みたいだな」
「えっ? 行けなかった? 行けなかったんですか!?」
「ああ。だから──あの通り、気を落としている」
「それで、あんな猫背になってるんだ……ネコだけに」
薪置き場の隅に座り込んだネコは、見るからに悄然としていた。
その首の後ろにできた毛玉は順調に育っているが、何やら本体の方が弱っている。
撫でてくれた老婦人に愛嬌を振りまく気力もなかったほどだから、相当だろう。
それにしても、異世界に行けなかったとはどういうことだろうか。
疑問に思っていると、ネコはいまだかつてないほど弱々しい声で私を呼んだ。
『珠子や……母はもう、だめじゃ……』
「いや、何が……ちょっと大丈夫? しっぽヘニャヘニャになってるじゃない。元気出してよ」
『我はもう、世界から世界へと移る力を失ってしまった……これでは、ただのかわゆいネコちゃんではないか……』
「ただのかわゆいネコちゃんって……凹んでるのかと思ったら、普通に自己肯定感高いなぁ」
崖から落ち、地面に激突するのを、ネコは異世界に転移することで回避しようとした。
しかし結果的には、この世界の中でしか転移することが叶わなかったらしい。