この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
「──っ!」

 ミケが突然立ち止まり、私を背中に隠しつつ腰に提げた剣に右手を添えた。
 腕の中のネコの毛がぶわわわっと膨らむ。
 何事かと顔を上げた私は、次の瞬間、喉の奥で悲鳴を上げた。

「ひっ……」

 茂みの向こうから、にゅっと首を出してこちらを見つめているものがいたのだ。
 小麦色の毛並みにヒョウのような黒い斑点があり、ベンガルを彷彿とさせる見た目をしている猫に似た大型肉食獣……


「──レーヴェ!」


 しかし、顔のサイズを見ただけでもわかる。
 一昨日、国境付近で遭遇したものより、さらに大きな個体であることが。

「タマ、私の背中に隠れるようにして、ゆっくりと下がれ。音を立てないようにな」
「ミ、ミケ……」
『ふ、ふんっ! ででで、でかい面をしおって!』

 老夫婦の言っていた獣とは、このレーヴェのことだったのだろうか。
 ミケがそっと逃がそうとしてくれるが、私は恐怖で膝が笑いそうになる。
 ネコは体を膨らませて威嚇するが、イカ耳になっているところを見ると、怖いのは怖いらしい。私に爪を立ててしがみついてくる。
 シャッ、と音を立ててミケが剣を抜いた。
 ガサガサと茂みを揺らして、レーヴェも巨体をあらわにする。
 辺りを包む緊迫感に息をするのさえ苦しくなった──その時だった。



『ごきげんよう、人間。それと、小さな同朋』


「「『──しゃべった!?』」」
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