この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
『お前が噛んでできた公爵の傷はもう完治しとるし、あやつは拾って育てたレーヴェのことも忘れてはおらんぞ』
『本当かにゃ? だったら、うれしいにゃん!』

 ネコの言葉に、元祖チートは太くて長いしっぽをピンと立て、小刻みに震わせた。
 ついには、ドスドスと地面を踏み鳴らして小躍りし始める。
 それを眺めつつ、私はミケの袖を引いた。

「ねえ、ミケ……私、気づいちゃったんですけど」
「何に気づいたと?」
「あの子のしゃべり方っていうか、語尾の〝にゃ〟っていうの──あれって、公爵閣下の影響ですよね?」
「……なんだって?」

 ミケはまだ知らないが、今現在チートを名乗っている子も同じしゃべり方をする。
 新旧のチートがミットー公爵から人間の言葉を学んだのだと考えれば……

「公爵閣下はきっと、あのレーヴェにもそういう風に話しかけてたんですよ。〝にゃ〟って」

 そもそも思い返してみれば、ミットー公爵は子ネコと戯れている時から、普通に語尾が怪しかったのだ。
 他の将官達の壊れっぷりが強烈だったため、かすんでしまっていただけで。
 私の主張を受けて記憶を辿ったミケは、ミットー公爵が〝にゃ〟と口にする姿を思い出して……

「ふぐっ……」

 腹筋が崩壊した。
 お腹を押さえて震える彼の顔を、ネコと元祖チートが、にゃんだ、にゃんだ、と覗き込む。
 私はミケの背中を撫でながら続けた。

「もしかして公爵閣下って、赤ちゃん言葉とかも使っちゃう系の人なんですかね? 准将やロメリアさんが赤ちゃんの時も、〝おっぱい飲みまちゅか〟とか聞いてたんじゃないですか?」 
「……っ、くっ、やめてくれ、タマ。想像してしまったじゃないか」
「ミケにも言ってたかもしれませんよ? 〝殿下、高い高いしまちゅかー〟とか」
「……ふふっ、勘弁してくれ。次に公爵の顔を見た瞬間、爆笑する自信がある」

 ミケは、ついにはその場にしゃがみ込んで笑いを堪える。
 ところが……
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