この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
「あの時死ななかったとしても……タマという癒やしがなければ、私はこの半年の間に潰れていたかもしれない」

 しみじみと語る彼を、私の腕の中からネコがジロリと睨み上げる。

『我が、珠子を連れて来たんじゃぞ! つまりは、我もまたお前の命の恩人じゃ!』
「わかったわかった。お前もありがとうな」
『こらあっ! 珠子のついでみたいに撫でるんじゃないっ! もっと心を込めて! 恭しくっ! おネコ様を崇め奉り、末代までこの尊さを語り継げよっ!!』
「注文の多い……」

 ミケは呆れつつも、ネコの頭を要求通り恭しく撫でる。
 それから同じくらい丁寧に、もう一度私の髪も撫でつつ呟いた。

「タマがいない世界など、想像したくもないな……」

 私にとってここは、新たな人生が始まった場所でもある。
 ミケを皮切りに、脇腹を刺された代償というには余りあるほどの良縁に恵まれた。
 もしも今、元の世界に戻してやると言われても、私は断固拒否するだろう。
 ネコが異世界転移能力を失ったことは、むしろ好都合だったのだ。
 ただし、ネコにとっては不本意であり、不幸なことかもしれない。
 私は罪悪感を紛らわせようと、ミケと一緒になってネコを撫でる。
 首の後ろにでき始めていた毛玉は、この時にはすでになくなっていた。 
 

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