この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
 文句を言いつつも、ネコの爆食は続く。
 やがて、巨大な黒い綿毛の間からブロンドの髪が覗き始めた。
 さらには人間のシルエットが現れ、それはほっそりとした女性の後ろ姿になる。
 トラちゃんの母親カタリナさんの本来の姿が、ようやく私の目にも見えるようになってきた。

「ネコ……? だ、大丈夫……?」

 おそるおそるソファの前に回ってみれば、彼女の膝の上に真っ白い毛玉が乗っかっていた。
 お腹をパンパンに膨らませて仰向けに倒れ込んだ、ネコだ。
 有言実行。ネコは、カタリナさんが溜め込んでいたあの凄まじい量の負の感情を食べ尽くしたのだった。

『どうじゃあ……珠子ぉ……見たかぁ……母の、本気をぉ……』
「う、うんっ……すごいね! が、頑張ったね!」

 ネコが、よろよろとカタリナさんの膝から下りる。
 私は手を伸ばしてそれを支えようとしたが……

『おえーっ!!』
「ぎゃーっ、いきなり吐いた! って、大丈夫、任せて! 猫が吐くのには慣れてるっ!」

 元猫カフェ店員の本領発揮とばかりに張り切るも、ネコが吐いた負の感情は、猫が戻した食べ物や毛玉みたいに床を汚すことはなく、落ち切る前に消え去った。

『うう……キモチ悪い……胃がひっくり返ったぞい……』
「もう、無理しないでよ。別に一気に食べ切らなくたって……」

 私は床に膝を突き、吐き疲れてぐったりとしたネコを抱っこする。
 そんな中、ふいに視線を感じて顔を上げ……
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