この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
『あったりまえじゃろうが! 珠子は、このキュートなおネコ様の一の娘じゃぞ! 弱っちかろうが、生意気だろうが、陰キャだろうが、母は全力で愛す! なんか、文句あるかっ!?』

 一気に捲し立てられたかと思ったら、ベシッと鼻に猫パンチを食らう。
 ぷにぷにの肉球は、ちゃんとポップコーンみたいな匂いがした。
 母猫が子猫を舐めるのは愛情表現だ。
 ネコもその習性を忠実に再現しているとするならば……

「私は今、お母さんに愛されているんだ……」

 私はとたんにくすぐったい心地になる。
 だらしなく緩みそうになるのを隠したくて、ネコの毛に顔を埋めようとした、その時だった。
 
「──みなさま、すぐに移動をお願いします!」

 案内役をしてくれていた中尉が険しい表情をして駆け込んでくる。
 ただごとではない様子に、カタリナさんとメイドの少女が怯えた顔をして身を寄せ合った。

「総督府内に、すでに不穏分子が入り込んでいることが判明しました! 非戦闘員は、即刻上階の安全な部屋に避難するよう指示が出ております! みなさまは、私がご案内を……」

 メイドの少女に手を引かれて立ち上がるカタリナさんや、ネコを抱っこした私に向かって状況を説明していた中尉の顔色が、さっと変わった。

「何者ですか! 止まりなさい!」

 彼女は鋭い声を上げ、腰に提げていた剣に手を掛ける。
 答えたのは、聞き覚えのない男性の嘲りを含んだ声だった。
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