この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
「マ、マルカリヤン殿下……!?」

 息急き切って現れたのは、革命軍の代表だ。
 その後ろに、大佐と数名の武官が続いた。
 ただし、ミケの姿はどこにもなくて、私はとたんに心細くなる。
 カタリナさんが人質に取られているのに気づいた革命軍の代表は、真っ青になりつつ震える声で問うた。

「ど、どうして……あなたが……? 処刑されたはずでは……」
「残念だったな。貴様らが切ったのは、私のものではなく影武者の首だよ」

 マルカリヤンには、優秀な影武者がいたらしい。
 それこそ、親兄弟でも見間違えるほど瓜二つで、彼のためなら喜んで命を投げ打つほど忠誠心の高い身代わりが。
 彼は、同じほど忠実な親衛隊の生き残りとともに、革命軍から主導権を取り返す機会を虎視眈々と窺っていた。
 最終目標は、自らがラーガスト国王となって王家を再興し、ベルンハルト王国の影響を排除することだろう。
 マルカリヤンは、人質を取られて身動きのとれない革命軍の代表を鼻で笑うと、バルコニーから声を張り上げた。

「聞け、ラーガストの民よ。私は、マルカリヤン。お前達の王──いや、神となる人間だ」

 演説し慣れた支配者の声は、一瞬にして人々の意識を惹きつけた。
 神を名乗るだなんて烏滸がましいと思うが、元来敬虔な性分のラーガスト王国民によって、国王は長らく生き神として崇められてきたのだ。
 順当に行けば、次のラーガスト国王となるのはこのマルカリヤンだったのだから、彼の言葉はあながち絵空事ではないだろう。
 それを証拠に……

『おいおいおいっ! ラーガストの人間どもめっ! こんなやつの言葉に耳を傾けてどうするんじゃいっ!!』

 ネコが忌々しげに言う通り、ラーガスト王国の人々はマルカリヤンの演説に聞き入ってしまっていた。
 彼らを満足そうに見下ろして、マルカリヤンが続ける。
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