この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
 すかさず、バルコニーの陰で矢を番えて老夫婦の孫を射ようとするのは、最初に私の腕を掴んでいた男だ。

「や、やめっ……むぐっ!?」

 私はぎょっとして叫ぼうとしたが、マルカリヤンの手に口を塞がれてしまった。
 んんーっ! と叫んでもがくが、マルカリヤンはびくともしないし、老夫婦の孫自身は狙われているのに気づく様子もない。
 私のただならぬ様子に、革命軍の代表や大佐達もこちらに駆け寄ってこようとするが、人質がいるため思うようにいかなかった。

『こりゃあ、いかん! 貴様ら、いい加減に離せいっ!!』

 ここで、マルカリヤンの部下達の顔面に猫パンチを浴びせてようやく解放されたネコが、バルコニーに飛び出そうとする。
 しかし、矢が放たれる方が早い──そう思った瞬間だった。

「うわっ……!?」

 突然、バルコニーの向こうから誰かが飛び出してきて、弓を引き絞っていたマルカリヤンの部下を殴りつける。
 その拍子に放たれた矢は軌道が大きく外れ、バルコニーの柵に当たって跳ね返った。

「……っ、くそっ!」

 マルカリヤンの部下はすぐさま体勢を立て直して応戦しようとしたが、間髪をいれず鳩尾を蹴り上げられ、そのまま俯せに倒れ込んでぴくりともしなくなる。
 あっという間に彼を伸してしまった人物の正体に気づき、口を塞がれたままの私は心の中でその名を叫んだ。
  

(──ミケ!)


 ミケは、怒りを湛えた目でマルカリヤンを睨みつけていた。
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