この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
挿話2

癒やし要員のお仕事

 この日の午後、ベルンハルト王国軍幹部会議は紛糾していた。
 ネコを抱き、チートを肩に乗せ、お茶のセットが載ったワゴンを押して訪ねてきた私は、ただならぬ雰囲気に立ち尽くしてしまう。

『ぐっふっふっ、この負の感情が満ち満ちて澱んだ空気……大好物じゃわい!』

 そう言って舌舐めずりするネコを、思わずぎゅっと抱き締める。
 ネコのお腹の毛に潜り込んでいた子ネコ達が、なんだどうした、と言いたげに顔を出した。

「西部の復興を援助するのが最優先でしょう! あそこは古くから畜産業が盛んでしたからな!」
「それを言うなら、小麦の栽培を担っていた南部への助成が不可欠です! 穀物は備蓄ができますし、家畜の餌にもなる!」

 額に向こう傷がある強面とメガネをかけたインテリヤクザ風──お手製の猫用おもちゃを貸し合いっこしたりといつも仲良しな二人の中将が、険しい顔をして意見をぶつけ合う。
 後者が人語でしゃべっているところを見るのは、随分と久しぶりだ。

「お言葉ですが、北部地域の特産である花の存在も無視できないと思います! 異国での需要も高かったと聞きますし、輸出で外貨を稼がせるべきかと!」
「いや、まずは自給自足を安定させるべきです! 人々が飢えているのに、悠長に花など育てている場合ですか!」

 黒髪オールバックとスキンヘッドの強面──幼馴染の間柄で、週一でお泊まり会をするという少将同士も、今にも胸ぐらを掴み合いそうな剣呑な雰囲気になっていた。
 さらに……
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