この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
「まったく、おタマは何をしているのかしら──めちゃくちゃ癒やされますわね」
「完全に同意する」

 掃き出し窓の側に立って、真顔で頷き合うのはロメリアさんとミケだ。
 
「殿下が崖から飛び下りるのを目にした時は、生きて再び出会えたならば一発殴ってやろうと思っておりましたが……モフモフ塗れのおタマを見ていると、どうでもよくなってまいりましたわ」
「まあ、なんだ……皆には迷惑も心配もかけてすまなかったと思っている。一発殴って気が済むのならば、そうしてもらっても構わん。ただ私は、あの時の行動を後悔するつもりはない。タマを救えたのだからな」
「もうどうでもよいと申しておりますでしょう。それよりも、さっさと話を終わらせておタマを愛でまくりたいですわ」
「完全に同意する」

 再びこくりと頷き合う真顔の二人に、部屋の中でソファに座ったミットー公爵が、はははっと声を立てて笑う。
 その首が右に傾いているのは、数十年ぶりの再会に興奮した元祖チートに飛びつかれて痛めたせいだ。

「ゴキャッ! とすごい音がして、首の骨が折れたかと思いましたー!」

 准将が身震いしながら、その時のことを語ってくれた。
 そんな准将は今、総督府の責任者である大佐と並んでミットー公爵が座るソファの後ろに立ち、向かいのソファにはラーガスト革命軍の代表とトラちゃんが座っていた。
 なお、カタリナさんは、中尉とメイドの少女が別室に連れていった。
 トラちゃんも、バルコニーにいる私やネコ達を気にしてはいるが、どうにも顔色が優れない。
 というのも……
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