この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜

38話 記憶の共有とゼロ距離

 ラーガスト王国軍の残党が塞いだ峠道は、すでに復旧していた。
 私達はそれを越えて、無事国境に到達する。
 ライガーサイズのレーヴェは、行く先々で人々に二度見をされたが、いい用心棒ともなった。
 しかし、往路で夜這い騒動があった領主屋敷に再び宿泊した際、ミケに充てがわれたベッドに彼を潜ませたのは……ちょっとやりすぎだったかもしれない。

「きゃああっ!!」
『にゃああっ!!』

 真夜中の屋敷に、耳を擘くような若い女性の悲鳴と、大型肉食動物の咆哮が響き渡った。
 懲りずに忍び込んできた領主の娘が、それに驚いた元祖チートの超強力猫パンチによって、危うく首を吹っ飛ばされるところだったのだ。

「彼女の打たれ強さには、いっそ感心しますわね」
「とっさにレーヴェの一撃を躱した、あの反射神経……侮れませんな」

 そんな領主の娘に、ロメリアさんやミットー公爵が感心する。

「ここまで執着されると、さすがに怖いんだが……」

 一方、当事者であるミケは心底うんざりとした様子だった。
 なお、肉食令嬢と直接対決させられた元祖チートはというと……

『怖かったにゃん! おれ、貞操の危機だったにゃん!』

 そう言ってブルブル震えていた。
 そんなことがありつつも、私達は順調に王都への道を突き進む。
 最後の休憩が終わった後、ミケは私を自分の馬に乗せた。
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