この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
 トラちゃんをラーガスト王国にある総督府に送り届けてからもうすぐ半年。
 ベルンハルト王国とラーガスト王国の戦争が終わり、そして私がこの世界に来てからも、間もなく一年になろうとしていた。

「かぁわいいなぁ、おタマちゃんは! そろそろ、おじさんちの子になってもいい頃合いではないかな?」
「うーん……じょりじょりする……ほっぺがすりおろされる……」
「おタマ! わたくしの妹の座も、まだ空いておりましてよ!」
「わ……いいにおい……ロメリアさんのいもうとに、なりゅ……」

 今日も今日とて、私は王妃様の部屋で催された飲み会にて、やんごとなき酔っ払い達に挟まれていた。国王様とロメリアさんだ。

『うにゃあ……タマコ姉さんは、モテモテだにゃあ』
『ですが、珠子姉様は母様の一の娘で、わたくし達のお姉様。国王にもロメリアにも、差し上げられませんわ』

 元祖チートは国王様の肘置きを務め、ロメリアさんの後ろで苦笑いを浮かべているメルさんの肩の上からは、ソマリがツンと澄ました顔で二人を見下ろしている。

「「「「「ミー! ミーミー!」」」」」

 テーブルの上をこちら向かって駆けてくる子ネコは、全部で五匹。
 このうち二匹は、総督府より戻ってきてから生まれた子達だった。
 そんなモフモフの弟妹達が、国王様とロメリアさんに揉みくちゃにされる私を心配そうに見上げる。
 結局、今回も見かねたミケが私の両脇の下に手を突っ込んで、やんごとなき酔っ払い達の間から引っこ抜いてくれた。
 
「タマの保護者は私だぞ。父上とロメリアはすっこんでいてもらおうか」
「ミケは……おかあさん……?」
『こぉらあ、珠子ぉ! お前は母はこの我じゃろうが! お前はお母さんは、ネ! コ! ちゃんっ!!』
「うん……わたしのおかあさんは、ネコちゃん……」

 ミケの肩にいたネコが、赤くなった私の頬をピンク色の肉球でペチペチする。
 猫の平均体温は人間のそれより高いため、肉球に触れると温かく感じるのが普通だが、今は私の頬の方が温度が高そうだ。
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