この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
「そ、そうなんですけど! でも、マルさん……すっかり丸くなってしまいましたし……」
『ぬはははっ! マルさんだけになっ!』

 マルさんこと元ラーガスト王国王太子マルカリヤンは、トラちゃんが半年を過ごしたのと同じ、あの王宮の一室に軟禁中だ。
 総督府で神を名乗って演説したのと同一人物とは思えないくらい、現在は慎ましく静かに過ごしている。
 ただし、トラちゃんとは違い、生まれながらにラーガスト国王となることが運命づけられていた彼は、有益な情報をたくさん持っていた。
 ラーガスト王国の内政に関わる事柄はもちろん、ベルンハルト王国が把握していなかった第三国の動向まで。
 そのため、ミケは頻繁にマルさんの聴取を行っているようだが……

「マルさんも、このまま生かされることが決定したんですよね?」
「……ああ。反対する者も多かったが……やはり、これ以上血を流したくなくてな」

 マルさんがラーガスト国王となる道は完全に閉ざされ、隠し財産も根こそぎ没収された。
 これから彼が、ベルンハルト王国でどんな人生を送ることになるのか……それはまだ、誰にもわからない。
 
「……あのオルゴールは私が買おう。タマの私財があの男のために使われるのは、気に食わんからな」

 ミケはそう言うと、私の手の届かない棚の上にあったオルゴールを取ってくれた。
 なお、後日これをミケからのプレゼントだと言って渡すと、マルさんは苦虫を噛み潰したような顔をして呟いた。
 全財産を没収しておいて、これを……? と。
 オルゴール型の貯金箱だったらしい。
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