この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
「どうしたどうした、おタマちゃん! 酒が進んでいないではないかー?」
「まあ、おタマ。このわたくしの注いだ酒が飲めないなんて言いませんわよね?」
「ううーん、圧がすごいいい……」

 アッシュグレーの髪と青い瞳のイケおじと、フランス人形みたいな美女に挟まれ、目下アルハラに遭っているところだ。
 ミケの父親であるベルンハルト国王と、ミットー公爵令嬢ロメリアさんである。
 今まさに私のグラスに白ワインを満たしたのは、後者だった。

『こぉら、おっさんとツンデレ娘! 国王じゃか公爵令嬢じゃか知らんが、珠子にこれ以上飲ませるのはやめい!』
「おお、何だい何だい、おネコちゃん? 君も飲みたいのかね?」
「だめですよやめてください猫ちゃんにアルコールは厳禁です飲ませようものなら国王様だろうとぶっとばします」
「わははは! わかったわかった、おタマちゃん! おネコちゃんには酒は飲ませません! 誓います! だから、息継ぎして!」

 私を宥めた国王様は、ネコを抱き上げようとして高速猫パンチを食らっている。
 一国の君主にもかかわらず、クリームパンみたいなおててに連打されて、むしろ嬉しそうだ。
 反対隣に座ったロメリアさんは、ワイングラスを片手で回しながら、もう片方の手で私の髪を撫で回していた。
 こちらはまるで、猫を愛でるマフィアのボスみたいだ。
 私はそんな二人の間でグラスに口をつけようとしたものの、ふいに後ろから伸びてきた手にそれを取り上げられてしまう。
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