この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
「ミケが、昼間に王宮の方に戻ってくるのは珍しいですよね。国王様か王妃様に御用でしたか?」

 金髪をそっと撫でて問えば、ミケは私の肩口に顔を埋めたままくぐもった声で答える。

「タマの様子を見にきた」
「えっ、私? なんで、また……?」
「雨が、降ってきたからな」
「雨って……──あっ!」

 ここで私は、半年前の傷が痛んだのは雨のせい、というような話を彼にしたのを思い出した。昨日のことだ。
 雨が降り出したのに気づいたミケは、私がまた痛がっているのではないかと心配して、わざわざ様子を見にきてくれたのだろう。
 私は一瞬、言葉に詰まった。 
 ミケの貴重な時間を割かせてしまって申し訳ない気持ちと、忙しい中でも気にかけてもらえてうれしい気持ちとが、私の中でせめぎ合う。
 しかし、顔を上げたミケを見て、自然と溢れたのは笑みだった。

「ミケ、心配してくださってありがとうございます。今日はね、全然痛くないので大丈夫ですよ」
「そうか。それならばいいんだ」
「でも、雨に感謝ですね。一緒にお昼ご飯を食べられて楽しかったです」
「私もだ。タマの欲張りっぷりには笑わせてもらったしな。将官達へのいい土産話ができた」

 それは、ちょっと困る。
 欲張って具材を巻きすぎたせいで、半分も食べないうちに中身を全部落としてしまった、なんて失態を吹聴されるのは。
 私がどうやってミケの口を封じようかと考えていると……くすくすと柔らかな笑い声が聞こえてきた。
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