この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
「あの、国王様……一つ、お願いしたいことがあるんですが」
「うん、何かな。私にできることならなんでも聞こう」
「では──帰ってきたら、また私のこと〝おタマちゃん〟って呼んでくださいますか?」
「ん……?」

 国王様がきょとんとした顔になる。
 彼を支えていた侍従長や、子ネコ達を抱っこした将官達は笑顔になり、ネコはフンと鼻を鳴らした。
 ミケは、まじまじと私を見つめてくる。

「国王様と王妃様にそう呼んでいただけるの、好きなんです。また呼んでいただけると、うれしいです」

 私がそう告げたとたん、国王様は両手で顔を覆った。

「……私は今日、権力振りかざしたイヤなおじさんだったと思うんだが? 君の立場に対しても、割とイヤな感じのことを言ったと思うんだが?」
「それは、私がきらいだからですか?」
「そうではない。断じて」
「じゃあ、いいです。国王様にもお立場がありますもの」

 やがて顔から両手を離した国王様は、もう私もよく知る、腰痛持ちの気のいいおじさんに戻っていた。

「ミケランゼロと一緒に、無事に帰ってきておくれ……おタマちゃん」
「はい」

 国王様はそのまま、優しい父親の顔をミケにも向ける。

「ミケランゼロ……帰ったら、また飲もう。今度は、私が侍従長からいい感じの酒を掻っ払ってくるからな」
「承知しました。その時は、もう下戸の真似などなさらないでください」

 笑みを交わす国王親子を見上げ、やはり先日の飲み会のあれは、酔ったふりをしてはしゃぎたかっただけなのか、と私はため息を吐く。
 後日にいい感じの酒を掻っ払われる予定ができてしまった侍従長も、何ワロてんねん、と言いたげな顔をして、じろりと彼らを睨んだ。
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