店長代理と世界一かわいい王子様 ~コーヒー一杯につき伝言一件承ります~
いずれ国王となるであろう第一王子が、類稀なるオオカミ族の先祖返りが、巨漢のメイソン公爵を軽々と制したアンドルフ王国の最強が──エプロン姿の少女に大人しく頭を差し出している。
モフモフの耳だけに留まらず、結局頭まで撫で回されている。
かわいいかわいい、されている。
完全に──大きなワンコ。
「やっぱり──ウィリアム様が世界一かわいいです」
ウィリアムのフサフサの尻尾がブンブンと、それはもう喜びを隠しきれない様子で振られているのを見ると、観衆の間には自然と笑みが広がるのだった。
そんな中、途中で行き合ったのか、オリバーとクローディアが王宮の玄関を潜る。
目の前の光景と周囲の人々を見回した彼らは、顔を見合わせてこう言い交わした。
「妹と親友が公衆の面前でいちゃついている現場に遭遇してしまった兄の気持ちを述べよ。六文字」
「爆発しろ」
「正解」
「ご褒美にコーヒーを淹れてちょうだいよー。うーんと苦いやつ!」
代々のフォルコ家当主がコーヒー狂であること。
イヴの記憶力が抜きん出ていること。
それから、『カフェ・フォルコ』のコーヒーがおいしいということ。
これらの事実が広く知れ渡っているのと同様に──
「ウィリアム様、世界一かわいい」
「そうか」
やがて第三十五代アンドルフ国王となるであろう第一王子ウィリアムが、『カフェ・フォルコ』の店長代理の前では〝世界一かわいい王子様〟になることを──この王宮で知らない者はいなかった。
モフモフの耳だけに留まらず、結局頭まで撫で回されている。
かわいいかわいい、されている。
完全に──大きなワンコ。
「やっぱり──ウィリアム様が世界一かわいいです」
ウィリアムのフサフサの尻尾がブンブンと、それはもう喜びを隠しきれない様子で振られているのを見ると、観衆の間には自然と笑みが広がるのだった。
そんな中、途中で行き合ったのか、オリバーとクローディアが王宮の玄関を潜る。
目の前の光景と周囲の人々を見回した彼らは、顔を見合わせてこう言い交わした。
「妹と親友が公衆の面前でいちゃついている現場に遭遇してしまった兄の気持ちを述べよ。六文字」
「爆発しろ」
「正解」
「ご褒美にコーヒーを淹れてちょうだいよー。うーんと苦いやつ!」
代々のフォルコ家当主がコーヒー狂であること。
イヴの記憶力が抜きん出ていること。
それから、『カフェ・フォルコ』のコーヒーがおいしいということ。
これらの事実が広く知れ渡っているのと同様に──
「ウィリアム様、世界一かわいい」
「そうか」
やがて第三十五代アンドルフ国王となるであろう第一王子ウィリアムが、『カフェ・フォルコ』の店長代理の前では〝世界一かわいい王子様〟になることを──この王宮で知らない者はいなかった。