店長代理と世界一かわいい王子様 ~コーヒー一杯につき伝言一件承ります~
「──最後に、クローディアさんから」
「……クローディア? 待て、いやな予感が……」
「今日提出予定の書類ですが、どう考えても間に合いそうにないです。ごめんね。かしこ──とのことです」
「あいつ~」
クローディアは宰相付きの文官で、ウィリアムやイヴの兄オリバーとは王立学校で共に机を並べた仲である。
大変な才女である一方、並外れておっとりとしたところがあった。
この日も十五時の休憩に『カフェ・フォルコ』を訪れ、コーヒーを飲みながらイヴの仕事ぶりを一時間ほどニコニコと見守った末の、件の伝言だったのだ。
ウィリアムは飲み干したカップをカウンターに置くと、苛立たしげに銀髪を掻き回す。
「あいつの書類が上がらないことには、今手をつけている仕事が進まないというのに! ……あー、もういい! やめた! 今日はもう、私も仕事は終わりだ!」
彼はそう言うと、カウンター横の壁にかかっていた木の札を裏返した。
そうすると、『カフェ・フォルコ』は〝営業中〟から〝営業終了〟に。
時刻はすでに十七時を回っており、この日最後の客となった調理師がカウンターにカップを戻したことで、イヴもかまどの火を落とした。
それを見届け、ウィリアムが気を取り直すように言う。
「せっかく時間ができたんだ。街へ夕飯を食いに行こう。イヴ、何が食いたい?」
「わあ、うれしいです! 何にしましょうか──あっ、でも……」
「……クローディア? 待て、いやな予感が……」
「今日提出予定の書類ですが、どう考えても間に合いそうにないです。ごめんね。かしこ──とのことです」
「あいつ~」
クローディアは宰相付きの文官で、ウィリアムやイヴの兄オリバーとは王立学校で共に机を並べた仲である。
大変な才女である一方、並外れておっとりとしたところがあった。
この日も十五時の休憩に『カフェ・フォルコ』を訪れ、コーヒーを飲みながらイヴの仕事ぶりを一時間ほどニコニコと見守った末の、件の伝言だったのだ。
ウィリアムは飲み干したカップをカウンターに置くと、苛立たしげに銀髪を掻き回す。
「あいつの書類が上がらないことには、今手をつけている仕事が進まないというのに! ……あー、もういい! やめた! 今日はもう、私も仕事は終わりだ!」
彼はそう言うと、カウンター横の壁にかかっていた木の札を裏返した。
そうすると、『カフェ・フォルコ』は〝営業中〟から〝営業終了〟に。
時刻はすでに十七時を回っており、この日最後の客となった調理師がカウンターにカップを戻したことで、イヴもかまどの火を落とした。
それを見届け、ウィリアムが気を取り直すように言う。
「せっかく時間ができたんだ。街へ夕飯を食いに行こう。イヴ、何が食いたい?」
「わあ、うれしいです! 何にしましょうか──あっ、でも……」