店長代理と世界一かわいい王子様 ~コーヒー一杯につき伝言一件承ります~
 この大陸が、今のコーヒー豆のような楕円形に落ち着いたのは、六百年ほど前の話だ。
 それ以前は、無数の島々がバラバラに海に浮いた状態であったという。
 それぞれの島には異なる種族の獣人が国を構えていたのだが、突然起こった激甚なる地殻変動により、世界は一夜にして何もかもがめちゃくちゃになった。
 文明も、国境も──そして、秩序も。

 それから百年近くもの間、人々は混沌たる暗闇の中でもがくことになる。
 争い、奪い合い殺し合い、世界が先の見えない地獄の様相を呈する中、これを打開しようと声を上げたのはヒト族であった。
 ヒト族は身体能力こそ劣るものの、叡智と理性に抜きん出ており、共生を謳って多様性のある社会を作ろうと尽力した。
 最初はなかなか耳を貸さなかった他の種族も、とある特殊な事情により、やがてヒト族の存在を獣人全ての希望と捉えるようになる。
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