店長代理と世界一かわいい王子様 ~コーヒー一杯につき伝言一件承ります~
 微笑みで細まった彼女の瞳は、じっくりと淹れたコーヒーみたいな深い色をしており、カップから立ち上る香りとお似合いだ。
 オリーブ色のワンピースの上に白いエプロンドレスを重ね、艶やかな黒髪はゆるく編んでヘッドドレスを付けている。
 すると、カウンターの向こうから伸びてきた手が、カップではなくイヴの手をそっと包み込んだ。
 金色のフサフサの毛に包まれた、モフモフの手である。
 しかも、掌にはピンク色をした肉球まで付いており……

「どれだけ待たされようとも、まったく苦じゃないよぉ? だってその間、可愛いイヴを堂々と眺めていられるからねぇ」

 極め付けは、砂糖をたっぷり溶かしたみたいな、甘い甘い猫撫で声。
 カフェオレを注文したのは、金色の毛並みをした大きな猫だった。
 それも、真っ白いクラバットを結び、瞳と同じ青色のジャケットとズボンを身につけた二本足で立つ猫──ネコ族の獣人である。
 その背後を大勢の人々が行き交うも、誰一人彼の姿に驚く様子はない。
 長いヒゲをピクピクさせた猫紳士は、イヴが差し出すカップを覗き込んで大仰に言った。
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