店長代理と世界一かわいい王子様 ~コーヒー一杯につき伝言一件承ります~
「私もいつか、コーヒーをブラックで飲めるようになるでしょうか」
機嫌を直したイヴが、またぽつりと独り言のように呟く。
それを耳にしたウィリアムが片眉を上げた。
「イヴは、ミルクと砂糖をたっぷり入れないとコーヒーが飲めないんだったか?」
「う……だって、苦いの苦手なんです……」
日々、客の好みに合わせてあらゆるコーヒーを提供しているものの、実は彼女、コーヒー本来の味を楽しむ醍醐味を知らなかった。
物心がついた頃から身近にあるものだから馴染みも愛着もあるため、コーヒーが好きか嫌いかと問われれば、もちろん好きと答える。
ただし、コーヒーそのものの味わいを理解できていないイヴは、現在のところ経験でも情熱でもなく、記憶だけを頼りに『カフェ・フォルコ』を切り盛りしていた。
「まあ、コーヒーそのものの味を知らないまま、あれだけ膨大な種類の豆の特徴を記憶し、客それぞれの好みに合わせて瞬時に選別して提供するその技術には感服するがな」
「恐れ入ります」
機嫌を直したイヴが、またぽつりと独り言のように呟く。
それを耳にしたウィリアムが片眉を上げた。
「イヴは、ミルクと砂糖をたっぷり入れないとコーヒーが飲めないんだったか?」
「う……だって、苦いの苦手なんです……」
日々、客の好みに合わせてあらゆるコーヒーを提供しているものの、実は彼女、コーヒー本来の味を楽しむ醍醐味を知らなかった。
物心がついた頃から身近にあるものだから馴染みも愛着もあるため、コーヒーが好きか嫌いかと問われれば、もちろん好きと答える。
ただし、コーヒーそのものの味わいを理解できていないイヴは、現在のところ経験でも情熱でもなく、記憶だけを頼りに『カフェ・フォルコ』を切り盛りしていた。
「まあ、コーヒーそのものの味を知らないまま、あれだけ膨大な種類の豆の特徴を記憶し、客それぞれの好みに合わせて瞬時に選別して提供するその技術には感服するがな」
「恐れ入ります」