店長代理と世界一かわいい王子様 ~コーヒー一杯につき伝言一件承ります~
「やめ……やめてっ……聞きたくないっ! 何も聞きたくないっ!!」
「いいえ、聞いていただきます。その耳かっぽじってでも聞かせます」
「き、鬼畜っ……!!」
「おい、聞き捨てならんぞ。イヴのどこが鬼畜なんだ」
すかさず兄役が抗議してくれたため、イヴは鬼畜呼ばわりされたのを流すと、落ち着いた口調で言った。
「聞いておかないと、きっと後悔なさいます。──ニコルさんを、少しでも想うのなら」
「うう……ニコル……」
イヴに伝言を託したニコル・ハイドンは、王宮に勤める侍女である。
オズとは同い年の二十二歳。彼らは王立学校時代からの付き合いで、同時期に勤め出したこともあり気の置けない仲だった。
わざわざ昼休みの時間を合わせて、二人一緒にコーヒーを飲むのが日課の『カフェ・フォルコ』の常連客でもある。
ただし、どちらも奥手だったものだから、なかなか恋仲に発展することはなかった。
そんな中、保守的な家庭の出身であるニコルには、親が独断で決めた男性との結婚話が持ち上がる。
そして、本日──彼女は遠方で仕事をしている相手との顔合わせのために王都を発つ予定になっていた。
オズはその事実を受け入れられず、さりとて彼女を引き止める気概もない。
縁談の話を聞いて以降の彼はただ悄然として、現実からも、ニコル自身からも逃げるばかりだったが……
「いいえ、聞いていただきます。その耳かっぽじってでも聞かせます」
「き、鬼畜っ……!!」
「おい、聞き捨てならんぞ。イヴのどこが鬼畜なんだ」
すかさず兄役が抗議してくれたため、イヴは鬼畜呼ばわりされたのを流すと、落ち着いた口調で言った。
「聞いておかないと、きっと後悔なさいます。──ニコルさんを、少しでも想うのなら」
「うう……ニコル……」
イヴに伝言を託したニコル・ハイドンは、王宮に勤める侍女である。
オズとは同い年の二十二歳。彼らは王立学校時代からの付き合いで、同時期に勤め出したこともあり気の置けない仲だった。
わざわざ昼休みの時間を合わせて、二人一緒にコーヒーを飲むのが日課の『カフェ・フォルコ』の常連客でもある。
ただし、どちらも奥手だったものだから、なかなか恋仲に発展することはなかった。
そんな中、保守的な家庭の出身であるニコルには、親が独断で決めた男性との結婚話が持ち上がる。
そして、本日──彼女は遠方で仕事をしている相手との顔合わせのために王都を発つ予定になっていた。
オズはその事実を受け入れられず、さりとて彼女を引き止める気概もない。
縁談の話を聞いて以降の彼はただ悄然として、現実からも、ニコル自身からも逃げるばかりだったが……