店長代理と世界一かわいい王子様 ~コーヒー一杯につき伝言一件承ります~
「──任せろ。私が代わりに、ふーふーしてやろうではないか」

 ドスのきいた声でそう言って、カウンターと猫紳士の間に割り込んだ手の主は、一際上背のある若い男だった。
 銀髪の隙間から覗く金色の瞳は鋭いが、猫紳士に負けず劣らず洗練された装いをしている。
 イヴは、自分を庇って立った広い背中を見上げて、コーヒー色の両目をぱちくりさせた。

「ウィリアム様……?」
「イヴ、必要以上に客の戯言に付き合うものではないぞ。こいつのように、すぐに付け上がるからな」

 ウィリアムと呼ばれた男が顔だけイヴの方に向けてそう言うと、んにゃあ! と一鳴きした猫紳士が彼の手を振り払った。

「ウィリアム! 相変わらず、無粋なこわっぱだにゃあ!」
「無粋はどっちだ。イヴの仕事の邪魔をするな──おい、そこの子猫! お探しのじじいはここだぞ! さっさと連れていけ!」

 すると、廊下の向こうから一人の少年があわあわと駆けてくる。イヴと同じ年頃だろうか。
 子猫と呼ばれた通り、その金色の頭には三角の猫耳が付いていた。
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