店長代理と世界一かわいい王子様 ~コーヒー一杯につき伝言一件承ります~
「ええっと……先にダミアンさんとお付き合いされていたのはリサさん、ってことですか?」
「そうよ! 彼が宰相執務室で働くようになってすぐだから、もう五年の付き合いだわ!」
「なにそれ! 私は、一年前に恋人と別れたって聞いて付き合い始めたのよ!?」
実際の恋人はリサの方で、ダミアンはそれを隠したままヴェロニカとも関係を持っていたのである。つまりは、二股というやつだ。
リサは、イヴを挟んで向かいに立つヴェロニカを憎々しげに睨んで言った。
「同僚の侍女が教えてくれたのよ。ダミアンが、一階のコーヒー屋を利用して浮気相手と逢瀬の約束をしているみたいだって」
それを聞いたリサは真偽のほどを確かめるために、こっそり『カフェ・フォルコ』を張っていたのだという。
そうとは知らないイヴは、ちょうど午後のお茶休憩で来店したヴェロニカに、ダミアンからの伝言を伝えてしまう。
そこに、逆上したリサが飛び出してきてからの、泥棒猫! 発言だった。
一連の話を聞いたイヴは、愕然とした。
何しろ、知らないうちに浮気の片棒を担がされてしまっていたのだから。
──何でもかんでも伝えればいいというものではない
そう、ウィリアムに厳めしい顔で言われたことを思い出す。
彼のフサフサの耳に気を取られて、あの時は心に響いてはいなかったが、聞いてはいたのだ。
耳にさえ入れば、イヴの記憶の引き出しに必ず収納されるため、こうしてちゃんと必要な時に出てくる。
イヴはぐっと唇を噛み締めると、深々と頭を下げて言った。
「そうよ! 彼が宰相執務室で働くようになってすぐだから、もう五年の付き合いだわ!」
「なにそれ! 私は、一年前に恋人と別れたって聞いて付き合い始めたのよ!?」
実際の恋人はリサの方で、ダミアンはそれを隠したままヴェロニカとも関係を持っていたのである。つまりは、二股というやつだ。
リサは、イヴを挟んで向かいに立つヴェロニカを憎々しげに睨んで言った。
「同僚の侍女が教えてくれたのよ。ダミアンが、一階のコーヒー屋を利用して浮気相手と逢瀬の約束をしているみたいだって」
それを聞いたリサは真偽のほどを確かめるために、こっそり『カフェ・フォルコ』を張っていたのだという。
そうとは知らないイヴは、ちょうど午後のお茶休憩で来店したヴェロニカに、ダミアンからの伝言を伝えてしまう。
そこに、逆上したリサが飛び出してきてからの、泥棒猫! 発言だった。
一連の話を聞いたイヴは、愕然とした。
何しろ、知らないうちに浮気の片棒を担がされてしまっていたのだから。
──何でもかんでも伝えればいいというものではない
そう、ウィリアムに厳めしい顔で言われたことを思い出す。
彼のフサフサの耳に気を取られて、あの時は心に響いてはいなかったが、聞いてはいたのだ。
耳にさえ入れば、イヴの記憶の引き出しに必ず収納されるため、こうしてちゃんと必要な時に出てくる。
イヴはぐっと唇を噛み締めると、深々と頭を下げて言った。