店長代理と世界一かわいい王子様 ~コーヒー一杯につき伝言一件承ります~
 代々コーヒー狂が当主を務めてきたフォルコ家には、コーヒーを粗末に扱った者は末代まで許すな、という非常に偏った家訓がある。
 イヴとしては、すでに対価を支払って手に入れたものをどう扱おうが個人の自由だとは思うのだが、しかし精魂込めて拵えたものを粗末にされればいい気がしないのも事実だ。
 これが父や兄ならば、問答無用でダミアンを出入り禁止にしていただろう。
 そのダミアンは、金色の髪をぐしゃぐしゃとかき回して、なんで、どうして、とブツブツ言っている。
 美人侍女二人を恋人にしただけあって、金髪碧眼のなかなかの美形だが、あいにくウィリアムを見慣れているイヴは何の感慨も覚えなかった。
 いや、笑顔の下で、ざまぁ! くらいは思ってはいるが。
 それに気づいたわけでもないだろうが、ふいに顔を上げたダミアンの血走った目が彼女を捕らえた。

「──まさか、君がばらしたのか?」
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