店長代理と世界一かわいい王子様 ~コーヒー一杯につき伝言一件承ります~
「どうしたんだい、イヴ? ボクに会いたくなっちゃったのかにゃあ? 奇遇だね! ボクも会いたかったっ!!」
「はい、マンチカン伯爵閣下。お会いできてうれしいです」
御年五百歳を超えるマンチカン伯爵は国政の第一線を退いてはいるものの、相談役という立場で歴代のアンドルフ国王を支えてきた。
ピンク色の肉球でプニプニと自分の手を挟み込む猫又じいさんに、イヴはにっこりと微笑んで話を合わせる。
ネコ族の獣人と少女の仲睦まじい姿は、控えめに言っても尊い。
とたん、大会議室はほのぼのとした雰囲気に包まれた。
「おやおや、しばらく見ないうちにイヴはお姉さんになったなぁ」
「昔は、両手に乗るくらい小さかったのにねぇ」
そう言って、ふふふと笑みを交わす仲良しおじさん二人組は、宰相と財務大臣だ。後者は、いつぞやマンチカン伯爵を釣りに誘ったご隠居の息子である。
二人の言葉に、そうじゃったそうじゃったと他の大臣達も頷くが、あいにくイヴが彼らの両手に乗ったという事実はない。
「この子は、わたくしが乳をやって育てたのですよ」
手乗りイヴを妄想してほっこりするおじさん達をじろりと見回し、ふんすと胸を張るのは、プラチナブロンドの髪を結い上げた麗しい貴婦人──アンドルフ王国の王妃殿下である。
驚くことに、彼女の言い分は妄想ではない。
イヴは恐れ多くも、王妃殿下の母乳を飲んで大きくなった。
「イヴ、おいでおいで! おじさんがお菓子をやろう!」
そして、デレデレした顔でイヴを手招きする、この実に怪しいおじさん──彼こそがアンドルフ王国の現君主、国王陛下である。
父が亡くなった後は、イヴも兄も彼にたいそう世話になった。
言うまでもないが、国王と王妃はウィリアムの両親である。
そのウィリアムは、重鎮達の大歓迎にニコニコするイヴを見て顔を綻ばせかけたものの、すぐさまはっと我に返った。
十五時というと、『カフェ・フォルコ』が殊更繁盛する時間帯である。
にもかかわらず、店を離れたということは……
「──イヴ、何かあったのか?」
険しい顔をしたウィリアムが、議長席から彼女のもとへ駆けつけようとした、その時だった。
「──いい加減にしていただけますかしら」
「はい、マンチカン伯爵閣下。お会いできてうれしいです」
御年五百歳を超えるマンチカン伯爵は国政の第一線を退いてはいるものの、相談役という立場で歴代のアンドルフ国王を支えてきた。
ピンク色の肉球でプニプニと自分の手を挟み込む猫又じいさんに、イヴはにっこりと微笑んで話を合わせる。
ネコ族の獣人と少女の仲睦まじい姿は、控えめに言っても尊い。
とたん、大会議室はほのぼのとした雰囲気に包まれた。
「おやおや、しばらく見ないうちにイヴはお姉さんになったなぁ」
「昔は、両手に乗るくらい小さかったのにねぇ」
そう言って、ふふふと笑みを交わす仲良しおじさん二人組は、宰相と財務大臣だ。後者は、いつぞやマンチカン伯爵を釣りに誘ったご隠居の息子である。
二人の言葉に、そうじゃったそうじゃったと他の大臣達も頷くが、あいにくイヴが彼らの両手に乗ったという事実はない。
「この子は、わたくしが乳をやって育てたのですよ」
手乗りイヴを妄想してほっこりするおじさん達をじろりと見回し、ふんすと胸を張るのは、プラチナブロンドの髪を結い上げた麗しい貴婦人──アンドルフ王国の王妃殿下である。
驚くことに、彼女の言い分は妄想ではない。
イヴは恐れ多くも、王妃殿下の母乳を飲んで大きくなった。
「イヴ、おいでおいで! おじさんがお菓子をやろう!」
そして、デレデレした顔でイヴを手招きする、この実に怪しいおじさん──彼こそがアンドルフ王国の現君主、国王陛下である。
父が亡くなった後は、イヴも兄も彼にたいそう世話になった。
言うまでもないが、国王と王妃はウィリアムの両親である。
そのウィリアムは、重鎮達の大歓迎にニコニコするイヴを見て顔を綻ばせかけたものの、すぐさまはっと我に返った。
十五時というと、『カフェ・フォルコ』が殊更繁盛する時間帯である。
にもかかわらず、店を離れたということは……
「──イヴ、何かあったのか?」
険しい顔をしたウィリアムが、議長席から彼女のもとへ駆けつけようとした、その時だった。
「──いい加減にしていただけますかしら」