店長代理と世界一かわいい王子様 ~コーヒー一杯につき伝言一件承ります~
「──オリバーが戻ったそうね」
そんな声が響いたのは、ちょうど『カフェ・フォルコ』が閉店時間に差し掛かる頃だった。
せっかく戻ってきたというのに、店長オリバーはまたイヴに店を任せている。
ウィリアムやマンチカン伯爵を引き連れて、新しいコーヒー豆を焙煎しに行ってしまったのだ。
不在の兄の名を紡いだのは、凛とした若い女性の声だった。
続いて、チャリン、と硬貨が料金箱に落ちる音が響き、カップにホイップクリームを盛っていたイヴは顔を上げる。
「いらっしゃいませ……何になさいますか?」
「結構よ。誰がコーヒーなんか飲むものですか」
愛想よく問いかけるイヴとは対照的に、相手の女性は無愛想に返した。
(コーヒー専門店に来ておいて、コーヒーなんか、はないでしょうよ……)
そう心の中で突っ込みを入れたのは、この時カウンターでコーヒーを待っていたマンチカン伯爵家のジュニアだ。
この日も猫又じいさんのお守りで王宮を訪れたものの、焙煎の煙がどうにも苦手なため同行を拒否。『カフェ・フォルコ』で時間を潰すことにしたのだ。
イヴがこの時作っていたのは、彼の〝いつもの〟──カフェモカだった。
「コーヒーをご注文なさらないのでしたら、お代はいただけませんよ──ルーシアさん」
そんな声が響いたのは、ちょうど『カフェ・フォルコ』が閉店時間に差し掛かる頃だった。
せっかく戻ってきたというのに、店長オリバーはまたイヴに店を任せている。
ウィリアムやマンチカン伯爵を引き連れて、新しいコーヒー豆を焙煎しに行ってしまったのだ。
不在の兄の名を紡いだのは、凛とした若い女性の声だった。
続いて、チャリン、と硬貨が料金箱に落ちる音が響き、カップにホイップクリームを盛っていたイヴは顔を上げる。
「いらっしゃいませ……何になさいますか?」
「結構よ。誰がコーヒーなんか飲むものですか」
愛想よく問いかけるイヴとは対照的に、相手の女性は無愛想に返した。
(コーヒー専門店に来ておいて、コーヒーなんか、はないでしょうよ……)
そう心の中で突っ込みを入れたのは、この時カウンターでコーヒーを待っていたマンチカン伯爵家のジュニアだ。
この日も猫又じいさんのお守りで王宮を訪れたものの、焙煎の煙がどうにも苦手なため同行を拒否。『カフェ・フォルコ』で時間を潰すことにしたのだ。
イヴがこの時作っていたのは、彼の〝いつもの〟──カフェモカだった。
「コーヒーをご注文なさらないのでしたら、お代はいただけませんよ──ルーシアさん」